河崎秋子 「颶風の王」

東北と北海道を舞台に、馬とかかわる数奇な運命を持つ家族の、明治から平成まで6世代の歩みを描いた壮大な物語である。由緒ある庄屋の娘のミネが小作の吉治と駆け落ちするところから始まる。吉治は捕まって殺され、ミネは馬と一緒に逃げるが途中雪崩に遭い遭難。吉治の子供を妊娠していたミネは愛馬の肉を食らいながら奇跡的に助かり、捨吉を出産する。その吉治はその馬の血を引く牡馬をつれて北海道をに新天地を求めて赴く。根室に落ち着き、牧場で馬を育てながら生活を営む。
根室半島のすぐ南に花島(ユルリ島)という小さな島があるがその島は採った昆布を干す場所として利用したそうでそこに自分が育てた馬を使って荷物運びをさせていたが、16頭の馬が台地にいるとき台風による崖崩れで道が閉ざされてしまい、馬は断崖絶壁の島に取り残されてしまう。助けるすべもなく馬は野生化し、その子孫の馬が今も生存しているという。その馬を育てながら根室で育った祖母は入院中のベッドで馬のことばかり気にしていることを孫娘ひかりが帯広の大学で馬研究メンバーの人とユルリ島に調査に出かける。できれば祖母がかわいがっていたアオという馬の子孫を是非救い出したいと願いながら・・・
 ユルリ島に上陸したものの海霧のため馬の姿など見えない。祖母が馬を呼ぶときに「ぽぽぽぽ・・・」と呼ぶのだと言っていたのでまねをしてみた。なんとどこからともなく自分のそばに一頭の牡馬が近寄ってくるではないか。しかしそれ以上の親しさは伝わってこないし、しばらくしたら背を向けて去って行った。アオの子孫だとしても何代目かも分からない馬がどうして同じような習慣を身につけているのか、遺伝するのだろうか。不思議な幻想にとらわれながら思いにふける。はじめは連れて帰る手立てはないかと考えたがこの馬はやはりこの島で自由に暮らすのが一番幸せなのだろうと思い直し島を去る。人間と馬の絆を描いた感動的な作品である。
 この小説は一部はフィクションであり昆布業のために取り残された馬は事実であり現在も数頭が生存している。インターネットで「根室、花島」のタームを入力すると馬の記事などがでてくる。この島には一般には入ることを禁止されているので訪れることはできない。花の島としても知られているという。 三浦綾子文学賞受賞作品である。

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