柚木裕子 「慈雨」

定年退職した元刑事の神場智則が妻と二人で四国八十八カ所の巡礼の旅に出る。退職後も自分が担当した幼女殺人事件の犯人が誤認逮捕ではないかと悩み、陵辱され殺害された6歳の女の子の夢を見る。もし、そうなら今逮捕されて刑務所にいる犯人は無実だし、その後も真犯人は同じ犯罪を繰り返すかもしれない。と思いながら実際に16年も過ぎて今まさに同じような幼女殺人事件が起きてしまったのだ。最初に逮捕された犯人のDNAが幼女に残された犯人のものと思われる体液のDNAが一致したことから決定的となって裁判は終結した。しかし、問題は当時のDNA鑑定は精度がわるく信頼性に問題があったことがのちに解る。一方収監されている犯人は事件当日のアリバイらしきものが見つかったが警察の上層部はいまさらひっくり返しては警察の威信に関わるといって取り合わなかった。その判断に対し悩みながらも自分も黙認してしまった。自分が刑事としての信念を貫き通すことができなかったことを悩みながら、退職後に16年前の事件の洗い直しを決意する。もし、別の真犯人が見つかったら自分は今収監されている誤認された犯人と殺された幼女の遺族に自分の退職金をすべて擲ってでも償うべく決意するのである。しかし、自分は退職しているので捜査する権限はないので、信頼する課長、部下に協力を依頼する。巡礼の寺をめぐりながら、課長、部下と電話連絡しながら最後の八十八番目の結願寺をめぐるころ、真犯人が見つかり誤認であったことが判明する。もし、上層部がまた握りつぶすならマスコミに暴露してでも裁判やり直しを実現することを妻に告げる。その結果は今の財産をすべて失うことになるだろうと。妻は何言わずに夫の判断に従うという。それにしても直属の課長もすばらしい。定年までの2年を残して責任を感じて退職願いを出すのだった。
 こんなすばらしい刑事と直属の課長が今の警察にいるのだろうかとつくずく思う。いまの警察組織の中では真実の追求よりも自分の出世のために上司の顔ばかり伺う世界のような気がする。著者の柚木裕子はそれを訴えたかったのだろう。

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